家計簿をつけていて、毎月、貸借対照表を更新しています。現金があって、証券があって、その下に本や時計といった現物の”モノ”も資産として並べています。
ところが、そのモノの欄だけが、何年も前の数字のまま止まっていました。
買ったときにいくらだったかは書いてあります。けれど「いまいくらなのか」は、調べるのが面倒で、一度も更新していませんでした。他の欄は几帳面に埋めているのに、その列だけが動かない。この状態が、ずっと気持ち悪いままでした。
本が資産になるのかどうか。この記事では、その気持ち悪さに耐えかねて自分の記録を開き、実際に確かめたことを書きます。上がった本の話だけでなく、下がった本の話も一緒に出します。なぜなら、上がった話だけを並べても、それは”資産”の話ではなく、たまたま当たった話にしかならないからです。
「資産になる本」とは、値上がりする本のことではない
先に言葉を整理しておきます。ここでいう「資産になる(買った値段に対して、価値が大きく目減りしない)」とは、必ずしも値上がりすることを指しません。
普通に売られている新刊のほとんどは、買った瞬間から値段が下がります。読み終えて古本屋へ持って行けば、数百円になるかどうかという世界です。これは本が悪いのではなく、供給が十分にあるからです。同じ本を欲しい人が10人いても、市場に1万冊あるなら、値段は上がりようがありません。
逆に言えば、価値が保たれる本には共通点があります。もう手に入らない、という一点です。絶版になった、刷り部数がもともと少なかった、翻訳が一度きりだった。そうした事情で市場から数が消えていくと、需要が同じでも値段は動きます。
つまり「資産になる本」とは、内容が良い本のことではありません。内容が良く、なおかつ”替えが利かない”本のことです。ここを取り違えると、良い本を買っているのに資産としては目減りし続ける、ということが起こります。
実際に、5万円の本が20万円になっていた
手元にある本で、いちばん分かりやすい例を出します。
レオナルド・ダ・ヴィンチの『絵画の書』です。5万円ほどで購入しました。1年ほど前に相場を確認したところ、20万円ほどになっていました。いまはほぼ手に入りません。
この本が上がった理由は、私が目利きだったからではありません。単純に、市場から消えたからです。欲しい人が現れても、売る人がいない。その状態が続けば、提示される値段は上がっていきます。
ただし、ここで気をつけたいことがあります。この20万円という数字は、私がいま売って受け取れる額とは違います。古書店に持ち込めば買取価格はそれより低くなりますし、そもそも1年前に見た数字なので、いまも同じとは限りません。資産として数えるなら、”いま売ったら手元に残る額”で見ておかないと、自分の資産を過大に見積もることになります。
同時に、2万円の本が1万円になっていた
反対の例も出します。
『サイキック・マフィア』という本を、2万円ほどで購入しました。これは上がると思って買ったものです。現在は1万円ほどになっています。半分です。
値下がりに気づいたタイミングで、ネットオフに売却しました。持ち続けて戻るのを待つ選択もありましたが、そのときの判断としては手放しています。今後どうなるかは分かりません。
この一冊があるおかげで、私は「本は資産になる」と単純に言い切ることができません。選んだものが外れることは普通にあります。そして外れたことは、記録していなければ気づかないまま、資産の欄に2万円と書き続けることになります。
買った値段と取得日を入れておくと、いま持っているモノの含み益がカテゴリを跨いで合計されます。
モノフォリオを見る状態で、残る本と残らない本が分かれる
同じ本でも、状態によって値段は大きく変わります。私が古本を買うときに見ているのは、次の3点です。
- 書き込みがないこと(線引き・書き込みがあると、価値は明確に落ちます)
- カバーがあること(カバーの有無だけで評価が変わります)
- 帯があること(帯は捨てられやすいので、残っていること自体が希少です)
買う場所は、Amazon・メルカリ・日本の古本屋がほとんどです。同じ本が3か所にあって、状態と値段がそれぞれ違う、ということは珍しくありません。
資産として持つと、赤線が引けなくなる
ここが、本を資産として扱うときのいちばん厄介なところかもしれません。
私は「読むために買う本」と「資産として持つ本」を、あまり分けていません。資産として成立するような本は、内容としての価値も高いものがほとんどなので、必ず読みます。
ただし、資産として持つ本には赤線が引けません。書き込みをした瞬間に、先ほどの条件のひとつが崩れるからです。読みながら線を引きたくなる本ほど、線を引けない。この居心地の悪さは、実際にやってみるまで想像していませんでした。
本を資産として持つというのは、そういう制約を引き受けることでもあります。
いちばん困るのは、合計がいくらか分からないことでした
ここまで個別の本の話をしてきましたが、実際に困っていたのは、もっと手前のことでした。
月に1万円から3万円分ほど本を買っています。それが何年も積み重なっています。1冊ずつ見れば「これは上がった」「これは下がった」と言えるのですが、全部を足すといくらになるのかが、まったく分かりませんでした。
なぜ分からないかというと、調べるのが面倒だからです。1冊について相場を見るだけなら数分で終わります。けれど数十冊を1点ずつ開いて、値段を控えて、表に書き写して、という作業になった途端に、やらなくなります。私の場合は、やらなくなったどころか、最初から一度も更新していませんでした。
その結果どうなるかというと、貸借対照表のモノの欄に、買った当時の値段が何年も居座り続けます。上がっているのか下がっているのかも分からないまま、「だいたいこれくらい」という概算だけが残る。これは資産を把握しているとは言えません。
結局のところ、必要だったのは相場を調べる手段ではありませんでした。相場そのものは、メルカリでも日本の古本屋でも、開けば見られます。足りなかったのは、買った値段と、いま見た値段を並べて置いておける場所のほうでした。だから自分用に、その置き場所をモノフォリオとして作りました。本も金も時計も、取得価格と取得日を入れておくと、含み益が横断で合計されます。
記録を取り始めてから分かったのは、上がっている本と下がっている本の両方があって、合計するとどうなるのか、ということでした。1冊ずつの当たり外れよりも、その合計のほうが、自分の資産の実態に近いのだと思います。
まとめ
- 本が「資産になる」かどうかは、内容の良さではなく、替えが利かないかどうかで決まります
- 実際に、5万円で買った本が20万円になり、2万円で買った本が1万円になりました。外れることは普通にあります
- 状態(書き込み・カバー・帯)で評価は大きく変わります
- 相場を見るときは、”いま売ったら手元に残る額”で見ないと、資産を過大に見積もります
- そして、いちばん面倒なのは1冊ずつ調べることではなく、全部の合計を出し続けることです
この最後の一点が、私がいま手を動かしているところです。
もし手元に、買った値段のまま止まっている本があるなら、まずは3冊でいいので、いまの値段を調べて並べてみてください。上がっているか下がっているかより先に、合計がいくらなのかを一度見てしまうことを勧めます。私の場合、それが一番効きました。モノフォリオは、取得価格と取得日を入れておくだけで含み益が合計されるように作ってあるので、その3冊を置く場所として使ってもらえます。
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