資産になるモノとならないモノは何が違うのか——「替えが利くかどうか」の一本で切ってみた

「資産になるモノ」の話は、たいてい同じところで終わる

資産になるモノについて調べると、出てくるページの構成はよく似ています。金、時計、ワイン、絵画、不動産と並べて、最後は「実物資産は価値が下がりにくい」で締める。並んでいる品目もほとんど同じです。

読み終えても、自分の手元にあるものが資産として成立しているのかどうかは、結局よく分かりませんでした。品目の一覧は、自分が持っているものの答え合わせにはならないからです。

そこで、品目で覚えるのをやめて、線を一本引くことにしました。「替えが利くかどうか」です。この記事では、その線で自分が持っている金と本を実際に切ってみて、分かったことを書きます。

先に立場を書いておきます。私が持っているのは金(純金積立)と本の2つだけです。時計もウイスキーもバッグも持っていません。持っていないものについては、値がどう付いているかを語れないので語りません。専門家として書くのではなく、同じところで手を止めた人間として書きます。

資産として成立する条件は、実は2種類ある

切ってみて最初に分かったのは、「替えが利かないものが資産になる」という単純な話ではなかったということです。

金は、替えが利きます。私が持っている1グラムと、誰かが持っている1グラムは同じものです。にもかかわらず、金は資産として成立しています。つまり「替えが利かないこと」は資産の条件ではありません。

正確には、条件は2種類あります。

  • (A) 替えが利く=どの個体も同じなので、市場に価格が1つ決まっている
  • (B) 替えが利かない=個体ごとに違うので、価格が個体ごとに決まる

資産として成立しないのは、このどちらでもないものです。替えがいくらでも利くのに市場価格が付かないもの、つまり同じものが十分に出回っていて、しかも誰も指名して探していないものです。

そして実務上いちばん効いてくるのは、AとBで「いまいくらか」の調べ方が正反対になることでした。ここが、品目を並べる記事では出てこない部分です。

(A) 替えが利くモノは、価格が1つに決まる

金がこちらです。

1グラムは1グラムなので、目利きが要りません。どこで買っても品質は同じですし、自分の持ち分がいくらかを知りたければ、その日の価格に数量を掛ければ終わりです。誰が計算しても同じ数字になります。

これは大きな利点です。価格を調べる作業が事実上ゼロになりますし、機械にやらせることもできます。私が金の運用で考えているのは値段の調べ方ではなく、いつ動くかというルールのほうだけです(その中身は純金積立に売買ルールを作って30回以上回した記録に書きました)。

裏を返すと、Aに属するものでは「安く見つける」という戦い方ができません。価格が1つしかないので、目利きの余地がないからです。ここを理解しないままAとBを同じ気分で扱うと、どちらでも空回りします。

(B) 替えが利かないモノは、価格が個体ごとに違う

本がこちらです。

同じ書名でも、初版かどうか、帯があるか、カバーがあるか、書き込みがあるかで値段が変わります。私が古本を買うときに見ているのも、まさにその3点(書き込みなし・カバーあり・帯あり)です。つまりBでは、モノの名前だけでは値段が決まりません。

手元の例を2つ出します。レオナルド・ダ・ヴィンチの『絵画の書』は5万円ほどで購入し、1年ほど前に確認したときは20万円ほどになっていました。いまはほぼ手に入りません。市場から数が消えたためです。

一方で、『サイキック・マフィア』は2万円ほどで購入し、現在は1万円ほどです。半分になりました。これは上がると思って買ったものです。Bでは、選んだものが外れることが普通にあります。

ここを飛ばしている記事が多いのですが、外れる可能性はBの本質的な性質です。個体ごとに値段が決まるということは、個体ごとに間違えられるということでもあります。上がった例だけを並べれば、それは資産の話ではなく、たまたま当たった話になります。

そしてBには、もう一つ厄介な性質があります。価格を知るには、自分で調べに行くしかありません。Aのように機械が1つの数字を出してくれる世界ではないので、1点ずつ、それぞれの場所で見ることになります。本の場合の詳しい経緯は古本は資産になるのかに書きました。

買った値段と取得日を入れておくと、いま持っているモノの含み益がカテゴリを跨いで合計されます。

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どちらでもないモノは、資産にならない

逆側も書いておきます。

普通に売られている新刊のほとんどは、買った瞬間から値段が下がります。内容が悪いからではありません。供給が十分にあるからです。同じ本を欲しい人が10人いても、市場に1万冊あるなら値段は動きようがありません。

量産されている工業製品も同じ構造です。替えがいくらでも利き、しかも金のように市場価格が立っているわけでもない。この状態にあるものは、どれだけ丁寧に扱っても資産として数える対象にはなりません。

ここを取り違えると、良いものを買い続けているのに、資産としては目減りし続けるということが起こります。「良いモノを買う」と「資産になるモノを買う」は、重なることもありますが、別の話です。

持っていないカテゴリについて、書けることと書けないこと

時計、ウイスキー、バッグ。この3つは資産の文脈でよく挙がりますが、私はどれも持っていません。したがって、実際にいくらで取引されているか、どのモデルがどう動いたかは書けません。持っていない人間が書いた相場の話は、読む価値がないと思います。

書けるのは、線の当て方だけです。この3つはいずれも、同じ型が大量にあるものと、本数や個体が限られているものが、同じカテゴリの中に混在しています。前者はどちらでもないもの側に落ち、後者はBに寄ります。つまりカテゴリ単位で「資産になる」と言うことに、そもそも無理があります。

実際に持っている方であれば、この線を自分の手元の個体に当ててみるほうが、品目の一覧を眺めるより早いはずです。

分散させると、AとBが混ざる

ここからが、私が実際に困っていたところです。

資産をモノで持とうとすると、たいてい1カテゴリでは終わりません。金を持ち、本を持ち、人によっては時計も持つ。その時点で、手元にAとBが混ざります。

そして先ほど書いたとおり、AとBでは「いまいくらか」の調べ方が正反対です。金は口座を開けば残高が出ています。本はどこを開いても出てきません。1点ずつ、それぞれの場所で調べて、控えるしかない。混ざった瞬間に、合計を出す作業だけが手元に残ります。

私の場合、家計簿で毎月バランスシートを更新しているのに、モノの欄だけが何年も買った当時の値段のまま止まっていました。他の欄は几帳面に埋めているのに、そこだけ動かない。面倒だったからです。

結局のところ、必要だったのは相場を調べる手段ではありませんでした。相場そのものは、開けば見られます。足りなかったのは、取得価格と、いま見た値段を並べて置いておける場所のほうでした。だから自分用に、その置き場所をモノフォリオとして作りました。カテゴリが違っても、取得価格と取得日を入れておけば、含み益として横に並びます。

「いくらになるか」より「いまいくらか」

最後に、この記事でいちばん書きたかったことを書きます。

資産になるモノの話は、どうしても「これから何が上がるか」に流れます。けれど、記録がなければ、当たったかどうかも分かりません。

私が『絵画の書』の値上がりに気づいたのは、たまたま調べたからです。『サイキック・マフィア』が半分になっていたことに気づいたのも、たまたまでした。どちらも、意図して確認していたわけではありません。当たったものも外れたものも、見ていなければ同じ「分からない」に落ちます。

だから、順番としては先に把握のほうだと思っています。何が上がるかを考えるのは、いま何をいくらで持っているかが見えてからでも遅くありません。

まとめ

  • 資産として成立する条件は2種類ある。(A) 替えが利く(市場価格が1つ決まる)と、(B) 替えが利かない(個体ごとに決まる)
  • どちらでもないもの——替えが利くのに市場価格が立っていないもの——は資産にならない。良いモノであるかどうかとは別の話
  • AとBでは「いまいくらか」の調べ方が正反対。Aは機械が1つの数字を出せるが、Bは1点ずつ自分で調べるしかない
  • Bでは外れることが普通にある。上がった例だけを並べたものは、資産の話ではない
  • 持っていないカテゴリの相場は書けない。書けるのは線の当て方まで
  • モノで分散させるとAとBが混ざり、合計を出す作業だけが残る

もし手元に、買ったときの値段しか分からないモノがあるなら、まずはその中から3つだけ選んで、いまの値段を調べて並べてみてください。カテゴリが違うもの同士を並べると、調べ方がまるで違うことが実感として分かりますモノフォリオは、その3つを置いて含み益として横に並べるために作ってあります。上がっているか下がっているかより先に、合計を一度見てしまうことを勧めます。

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※この記事について
本記事は個人の記録であり、特定の商品・取引を勧めるものではありません。記載した価格は購入時および確認時点のもので、現在の取引価格を示すものではありません。モノの価格は変動し、記載の内容は将来の結果を約束するものではありません。